地理情報システム学会(GIS学会)第13回研究発表大会

完全な門外漢だが、分野としては非常に興味があるので参加してみる。SWoPPみたいなものだろう。所詮はSWoPPレベル、という感じのしょーもない発表が多かった。

10件聞いたなかで面白かったものを無理矢理あげると、

「カルトグラム作成ツールの開発」井上亮、清水英範
Distance cartogramとarea cartogramを簡単に作成するソフトを開発した、という研究。カルトグラムとは、距離や面積をなんらかの統計情報に比例させて歪んだ地図を描くことでデータを効果的に視覚化する手法。都市間の所要時間の変遷や国家の所得格差などを表現するのによく用いられるあの図だ。これまでは地図職人が作成していたが、信頼感には乏しかった。彼らはカルトグラムの自動生成手法を定式化して、さらに使いやすいソフトの形にした。アニメーション機能が非常に印象的であった。近日公開予定、とのこと。
「集団の行動特性を考慮したPRTR物質の曝露量推計に関する検討」坂本愛、福井弘道
ある汚染物質(この場合はブタジエン)に各地域の住民がどれくらい曝されているかを推計する場合、これまでは住民の一日の中での移動(通勤や外出など)を考慮に入れていなかった。彼らは地域ごとの住民構成、各構成主体ごとの一日の時間の内訳などの統計情報を基に新たな推計量を算出した。私としては、推計量を検証するにはどうするのか、誤差の上に誤差を重ねているような推計量にどのような意味があるのか、といった問題点を感じたが。

全体的に感じた点を列挙してみる。

  • スーツの人が8割以上。コンピュータ科学分野の学会とは全く違う。
  • 原稿を見ながらしゃべるな。
  • 会場の観客はもっと質問しろ。私みたいな門外漢が2回も質問してしまったではないか。
  • 「こういうデータを用いてこういう分析をしてみました」というところで終わっている研究ばかり。分析の結果、分析するまでもない当たり前の結果しか言っていない。なんら新しい知見は得られておらず、まるで分析自体が目的であったかのようだ。実際、各発表を聞いていても用いた分析手法の説明(なんとか回帰分析を用いた、なんとか検定を用いた、など)が発表時間の半分以上を占めていたりする。そんな分析手法の説明なんかスライド1枚でいいっつーの。分析の結果と考察が重要だろうが。
  • 分析自体はある程度は客観的(これも怪しいもんだ)だが、なぜそういう結果が得られたのか、という理由を考察する段階で突然主観的になるのは大問題だ。そこからが本当の研究であって、分析なんてただの下準備なのに。
  • 典型的な「構想1時間、作業1週間」という研究が多い。
  • ある地域(札幌、大阪府、紀ノ川、鎌倉など)を特定して扱う研究が多いが、その地域を扱ったからこそ得られる特別な知見というものがほとんど無い。

全体的に言って「もし私が研究したらもっと面白くできるのに」という研究ばかりであった。まあ、面白い研究なんてそうそう無いわな。